コラム

自分がそうさせている

私は20代後半の女性社長だ。社長としての年齢は比較的若い。

起業したての20代前半のときは、男性クライアントからサービスについて値切りされることが多々あり、いわゆる「なめられていた」時代がある。

正直に話すと当時は自分にも原因があるということを考えず、クライアント側に非があったのではないかと考えていた。

しかし、自分の行動を振り返ってみると、無意識ながらも「自分がそうさせている」ことに気が付いた。

とある研修に参加した際、講師への質問で女性参加者からこんな質問が上がった。

「口説いてないのに口説かれることが多く悩んでいます」

この質問に対し、講師はこう言ったのだ。

「口説かれているようにしているのはあなただ」

よくよく考えてみると講師の答えに納得がいく。当時セミナーには多くの人が参加していた。集団を前にしてそのような質問を投げるということは、少なからず「口説かれて悩んでいる自分に酔っている」状態なのだ。

私は一経営者として、女性として見られることより人間として惚れられることの方がよっぽどうれしい。口説かれることに悩んでいる女性経営者には、口説かれることを悩みとして捉えるのではなく、自分は下に見られていて恥ずべきことだと自覚した方がよい。

私は意識や行動を変えたことで、ここ3年ほど口説かれていない。自慢ではないが。

もう1つ、秘書業務を遂行する中でコンテキストがどれだけ大事か実感した出来事がある。

先日とある研修のサポートに携わった。講師がスムーズに研修を遂行できるように、私たち秘書チームのほか、裏方スタッフが集結した。

私たちはコンテキストを重要視しているので、夏の季節とは言えジャケットを着用しスーツ姿で参加した。しかし、ほかの裏方スタッフを見ると厚底サンダルやオープントゥーパンプスなど、ビジネスの場にふさわしくない装いの人が多かった。

講師が主役なので、主役より目立ってはいけない。それでも最低限のエチケットは必要なのではないかと思う。

研修会場には、当然真面目で意欲の高いお客様がたくさんいる。裏方という立場でも、私たちのコンテキストが講師の印象を左右することに、なぜ彼らは気付かなかったのだろうか。

このとき自分のおしゃれを優先するのではなく、講師の畑に合わせるべきだと痛感した。たとえ服装について指示がなかったとしてもだ。それが大将へのリスペクトに繋がるのだから。

この研修での驚きのエピソードはもう1つある。最後に「人ってそういうところだ」と言いたくなるエピソードを紹介しよう。

研修が終了し、私たち秘書チームで片付けを行なっていたときのこと。

裏方スタッフが座っていた席に、当日名刺交換をした人の名刺とチラシが置いてあったのだ。

いただいた名刺とチラシを置いて帰るなんて、ビジネスマナーとしていかがなものだろうか。たとえ今後二度と会わないような人だったとしても、しっかり受け取って持ち帰るのがマナーだ。

研修会場での2つのエピソードは、私が秘書サービスを提供する上でとても深い学びになった。私の会社では、クライアントだろうとクライアントじゃなかろうと、どんな相手でも敬意を忘れずに業務をしたい。