6月30日、海外でコールセンター業界の株が暴落しました。
業界2位のコンセントリックスが「お客さまが外注をやめ始めた」と発表して株価25%安。最大手のテレパフォーマンスも一気に16%下がって、10年ぶりの安値。アナリストが付けた評価は「uninvestable」——投資する価値なし、でした。
人の代わりに業務を引き受ける、世界最大級の会社たちが、です。
ニュースを読んで、なんと……と息をのみました。でも不思議と「怖い」とは思わなかった。胸の中にあったのは、
ああ、答え合わせが来たな。という感覚です。
今日は、Nekonoteという会社の舵を切りました、という報告です。少し長いですが、秘書やアシスタントとして働くあなたと、バックオフィスに悩む社長のあなた、両方に関係のある話なので、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
海外で消えたのは「仕事」じゃない
まず、何が起きたのかを正確に見ます。ここを雑に読むと「AIで事務職は終わり」という乱暴な話になってしまうと思うからです。
コンセントリックスの下方修正の中身は、「顧客企業が自社のAI投資にお金を回すため、外注を減らした。一部の会社はサポート業務ごと引き揚げた」というものでした。つまり削られたのは、時間と人数で値段がつく仕事。1時間いくら、1席いくらの、「人を貸します」型のビジネスです。
一方で、同じ週に出た別のニュースがあります。米大手コグニザントは、新しく結ぶBPO契約の約45%がすでに成果報酬型だと公表しました。「何時間働いたか」ではなく、「請求書を何件処理したか」「どれだけ業務が早くなったか」で値段が決まる契約です。インドのTCSも、成長がほぼ止まった中でAI関連の売上だけが四半期で13%以上伸びている。
整理すると、こうなります。
消えたのは「時間の切り売り」。生き残っているのは「成果の納品」。
仕事そのものは消えていません。値段のつけ方が変わりました。
では、日本の私たちは安泰か、というと…
ここで「海外の大企業の話でしょ」と流せないのが、経営者としての私の頭の方。
日本のBPO市場は、実は伸びています。矢野経済研究所の調査では2024年度で5兆円超、前年比プラス4%。しかも成長を引っ張っているのは大企業ではなく、中堅・中小企業がやっと外注を使い始めたという裾野の広がりです。
つまり市場は追い風。でも、海外で起きたことは数年遅れで必ず日本に来ます。「月30時間パック」みたいな時間売りのメニューは、お客さまが自分でAIを使えるようになった瞬間、静かに解約されていく。私はそれを、対岸の火事ではなく5年後のNekonoteの姿になり得るものとして見ました。
心と頭の話をすると、ここ1年ずっと、頭は「人と時間に値段をつける売り方は、いずれ限界が来る」と分かっているのに、心は「今のやり方で喜ばれてるし」と現状に留まっていました。このズレが、ずっと小さく苦しく。今回の暴落のニュースは、そのズレに引導を渡してくれました。
実際、痛い思いもしてきました。「秘書」という言葉は、いい意味でも悪い意味でも曖昧さが残ります。即レスして当たり前、こまめに動いて当たり前——「秘書って、普通こうでしょ?」という言葉に。
月額や時間で契約していても、期待の中身は人によってバラバラで、その期待値の調整がうまくいかず、クライアントさまにご迷惑をおかけしたこともあります。
これは、お客さまが悪いのではなく、私たちの気が利かなかったのでもなく。
「月額◯円」「月◯時間」という値札が、何を納品するのかを何も語っていなかったと反省しています。曖昧な値札は、必ず期待のすれ違いを生む。それが、人と時間に値段をつける売り方の、いちばん静かな欠陥でした。
Nekonoteは「人と時間」を売るのをやめます
正直に言うと、Nekonoteはもともと月額制が中心の会社です。時間売りのメニューも少しありました。ただ、振り返ってみると、月額という形をとりながら、実際にお渡ししていたのは「担当の◯◯さんの時間と頑張り」でした。
私が、フリーランスの時の”一人でうまくいっていた”あのやり方そのものを多くの人へ押し付けていた気がしています。
仕事が人に属人化して、「あの人だから頼める」で回っていた。そして社長さまたちの頭の中で、私たちはどこかで「事務員さんの代わり」だったと感じています。
値札の形が月額でも、中身が「人と時間」のままなら、時間売りと同じ弱さを抱えています。だから、何時間も何時間もメンバーと悩み舵を切りました。宣言はシンプルです。
Nekonoteは、人の時間と頑張りを売る会社から、「終わった状態」をお渡しする会社になります。
具体的には、こう変わります。
「◯◯さんにお任せ」でも「月◯時間」でもなく、「経理の月次締め、完了までやります」「請求書処理、◯件やります」という成果単位のサポートをしていく。そして新しく引き受けるお仕事は、最初に必ず業務の棚卸しから入ります。皆さまの会社の業務を全部机に並べて、「ここはAIで回る」「ここは人の判断と気遣いが要る」を切り分けて、AIに任せる部分の設定と運用まで、人が担う部分とセットで進行いたします。
AIは、私たちの敵ではありません。私たちが使いこなして、お客さまに成果として返すための道具です。海外の大手が証明してくれたのは「AIから逃げた代行業は沈む」ということであって、「代行業は要らない」ということではないということでした。
むしろ、日本の中小企業の現場には決定的に足りない人がいます。AIツールを選んで、業務に組み込んで、日々ちゃんと回す人。大手BPOはこの仕事を大企業と自治体に向けてやっています。中小企業も、困っている。そこが、Nekonoteの立つ場所です。
秘書として働くあなたへ
ここまで読んで、「作業がAIに渡るなら、私の価値は下がるの?」と少し不安になった方もいるかもしれません。
きっと、フリーランス秘書として働いていた頃の私も、同じことを思ったはずです。
でも、答えは逆です。
これまで私たちの価値を低く見せていたのは、AIではありません。
業界の「事務員さん」「時給」「空いた時間でもできる仕事」という考え方です。
どれだけ先回りして動いても、どれだけ気を利かせても、どれだけトラブルを未然に防いでも、「1時間いくら」という枠の中では、本当の価値を伝えきれなかったのです。
AIに作業を任せることは、サボることでも、手を抜くことでもありません。
私たちにしかできない「判断すること」「気づくこと」「相手を思って動くこと」に、時間を使えるようになるということです。
本来、一番価値があるのは、そこです。
そして、これからの秘書は、その価値に値段をつけられる人が選ばれていきます。だから、安心して作業はAIに渡してください。今まで一人で抱え込んできた仕事を、少しずつ手放していい。
その先で、あなたにしかできない仕事の価値は、これまで以上に高まっていくと私は信じています。
社長のあなたへ
そしてバックオフィスに悩む社長へ。あなたが迫られてきた二択——「人を雇って固定費を増やすか、自分が夜中に請求書をやるか」。二択ではないと考えています。
業務を棚卸しして、AIが回す部分と人が担う部分を切り分ければ、「雇わずに、終わった状態だけ手に入れる」が普通にできます。全部叶えましょう。攻めの時間も、整ったバックオフィスも。
答え合わせのつづき
冒頭でお話しした「答え合わせ」の意味を、最後にお伝えします。
私がこの仕事を始めた頃から、ずっと信じてきたことがあります。それは、価値は、費やした時間ではなく、届けた成果に宿るということです。AIがここまで進化し、業界全体が大きく変わる今、その考え方は間違っていなかったんだと感じています。
会社のサービスは変わります。肩書きも、働き方も変わります。でも、私たちが大切にしてきた想いは、1ミリも変わっていません。Nekonoteのミッションは、「社長のとなりで、愛のある一手を配る。」——今回のリニューアルは、新しいことを始めるためではなく、ずっと掲げてきたこの言葉に、事業の形を揃えていく。
私はよく、「心と頭が一致していれば、人は迷わない」と思っています。会社も、同じでした。
だから、これからのNekonoteは、AIに仕事を渡す会社ではありません。作業を受け持つのはAI。心を受け持つのは、人。 私たちのバリューである「三配り」で言えば、気配りの土台をAIが支え、人は心配りと時配り——愛にしかできない仕事に集中する。人にしかできない仕事に、人が集中できる環境をつくる会社です。
そしてこの形は、もうひとつの約束も守ってくれます。秘書メンバーにも、大切なお子さまや、パートナーや、家族がいます。かつては、誰かの時間でしか、誰かの安心を作れませんでした。
でも、今は違う。AIの手と、愛の手。その両方があるから、社長を待たせず、秘書の家族も待たせない。すべての挑戦のうしろで、大切な人が笑っている世の中——私たちが目指す景色には、社長のご家族と秘書の家族、その両方が入っています!
もし、あなたの会社に「誰がやる仕事なのか分からないまま残っている業務」が一つでもあるなら、まずは紙に書き出してみてください。その一行が、会社を変える最初の一歩になるかもしれません。
その先は、私たちがとなりにいます。社長を、勝たせる。
あなたは、誰かの大切な人だからです。

― 伊藤麻里