「事務の人を1人雇うと、いくらかかるんだろう?」
社長さまとお話ししていると、月給の額は決まっているのに、会社が実際にいくら払うことになるのかは、意外と把握されていないことが多いと感じます。
結論から申し上げます。
月給25万円の方を1人雇うと、社会保険料を足しただけで、会社の負担は毎月約29万円です。
ボーナス(年2回・各1か月分)と通勤手当まで入れると、年間で約419万円。1か月あたりにならすと、約35万円になります。
しかも、ここには採用費や備品、教える時間は含まれていません。

給与とは別に、会社が払っているもの
社員を雇うと、会社は給与のほかに、社会保険料の「会社負担分」を払います。
本人の給与明細から引かれている保険料とは別に、ほぼ同じ額を会社も払っている、というイメージです。
2026年度に会社が負担する主な保険料は、次のとおりです(東京都・協会けんぽ・事務職の場合)。
- 厚生年金:9.15%
- 健康保険:4.925%
- 介護保険:0.81%(40〜64歳の方のみ)
- 雇用保険:0.85%
- 子ども・子育て拠出金:0.36%(会社だけが負担)
- 労災保険:0.3%(全額会社負担)
- 子ども・子育て支援金:0.115%(2026年4月分から始まった新しい負担)
健康保険や厚生年金は、「標準報酬月額」に率をかけて計算します。月給25万円の方の標準報酬月額は26万円です。
月給25万円なら、会社負担は月40,705円
実際に計算すると、こうなります。

いちばん大きいのは厚生年金で、月23,790円。健康保険が12,805円で続きます。
合わせて月40,705円。本人に払う25万円とは別に、毎月これだけ出ていきます。
40〜64歳の方なら、ここに介護保険が加わって、月292,811円です。
月給別に計算すると

月給20万円なら月約23.1万円、月給30万円なら月約34.7万円。
どの月給でも、月給の約16%が毎月上乗せされる計算です。
ボーナスと通勤手当まで入れると、年 約419万円
ここまでは毎月の話でした。
でも実際には、ボーナスや通勤手当も払います。そして、ボーナスにも月給と同じ率で社会保険料がかかります。
月給25万円、ボーナスは夏と冬に1か月分ずつ、通勤手当は月1万円。よくある条件で1年分を計算すると、こうなります。

- 月給:25万円×12か月=300万円
- ボーナス:25万円×2回=50万円
- 通勤手当:1万円×12か月=12万円
- 会社負担の社会保険料(毎月分):約49.0万円
- 会社負担の社会保険料(ボーナス分):約7.8万円
合計で、年 約419万円です。
本人が受け取る額面は年350万円なので、会社はその約1.2倍を払っていることになります。
「月給25万円の人」は、会社から見ると「月約35万円の人」です。
ここに残業代が乗れば、残業代にも保険料がかかります。退職金や福利厚生の制度があれば、その分も加わります。
表に出てこないお金も、まだあります
保険料を足して終わり、ではありません。
- 採用にかかるお金:求人広告や人材紹介の手数料。採用がうまくいかなければ、またかかります。
- 働く環境のお金:パソコン、ソフトのライセンス、机やいす、通勤手当。
- 教える時間:仕事を覚えてもらうまでの、社長や先輩社員の時間です。
- 休むとき・辞めるとき:有給休暇の間も給与は払います。辞めれば、採用から振り出しに戻ります。
どれも、給与明細には一行も出てきません。
でも、会社のお財布からは確実に出ていきます。
「月給」ではなく「総額」で比べてください
採用か外注かを考えるとき、つい月給の額と外注費を並べて比べてしまいがちです。
でも比べるべきなのは、月給ではなく、会社が払う総額です。
月給25万円なら、ボーナスまで入れて年 約419万円。月にならすと約35万円です。
そこに、採用・環境・教える時間・辞めたときのやり直しが乗ってきます。
私自身、この計算をきちんとしてから、「1人雇えば楽になる」とは簡単に言えなくなりました。
金額を知ったうえで「それでも採用する」と決めるなら、それはとても良い判断だと思います。
大切なのは、知らずに決めないことです。
▼採用と外注の比べ方は「事務員を1人採用するか、外注するか」にまとめています
▼バックオフィスを丸ごと預ける「外部化戦略」について詳しく見る
― 株式会社Nekonote 代表取締役 伊藤麻里
※保険料率は2026年度(令和8年度)の東京都・協会けんぽ・一般の事業、事務職(労災保険率1000分の3)の場合です。賞与は年2回・各1か月分(標準賞与額25万円)、通勤手当は月1万円で計算しています。都道府県、加入している健康保険、業種によって変わります。正確な金額は、社会保険労務士や税理士にご確認ください。
出典:協会けんぽ 令和8年度保険料率、協会けんぽ 令和8年度保険料額表(厚生年金18.3%・子ども・子育て拠出金0.36%・子ども・子育て支援金0.23%)、厚生労働省 令和8年度雇用保険料率、労災保険率表