「秘書をつけるのって、経営者なら当たり前なのかな…?」
「オンライン秘書とリアルの秘書って、どう選んだらいいんだろう…」
先日、こんなつぶやきを見かけました。
秘書の会社を経営している私が言うのもなんですが、今日は少し辛口で書きます。
結論から申し上げます。
秘書は、いいものから選ぶのではありません。
消去法で選ぶものです。

リアル秘書が向いている社長
条件ははっきりしています。
- 秘書1人を雇い続けられるお金がある
- その人が毎日、まるまる1日働けるだけの仕事がある
- その人を育てる時間と覚悟がある
この3つがそろっているなら、リアル秘書を雇ってください。
同じ空間にいて、空気を読んで、先回りしてくれる。そういう秘書は本当に心強い存在です。
ただし、3つともそろっている会社は、思っているよりずっと少ないです。
ちなみに、月給25万円の方でも、ボーナスと社会保険料まで入れると、会社が払うのは年 約419万円です。くわしい計算は「月給25万円」の人を雇うと、会社は月いくら払う?にまとめました。
「優秀な人が来てくれる」は、勘違いです
秘書を雇おうとする社長の多くが、心のどこかでこう思っています。
「いい人さえ来てくれれば、全部うまくいく」と。
でも、考えてみてください。
気が利いて、口が堅くて、段取りがよくて、社長の機嫌まで読める人。そんな人は、どこの会社もほしがっています。
求人を1本出しただけで、あなたの会社に来てくれるでしょうか。
優秀な人は、そう簡単には来ません。
運よく来てくれても、まだ安心はできません。
採用費をかけて仕事を教えても、その人が続けてくれるかどうかは誰にもわかりません。
結婚、出産、介護、転職。人生には、こちらではどうにもできない事情がいくらでもあります。
辞めた日に、仕事は社長の机に戻ってきます。
しかも、どこまで進んでいたのかわからない状態で。
「秘書って、普通こういうことだよね?」
もう一つ、よく耳にする言葉があります。
「秘書なんだから、普通これくらいやってくれるよね?」
その「普通」は、誰の普通でしょうか。
前にいた会社の秘書が、たまたま何でもやってくれた人だったのかもしれません。ドラマで見た秘書のイメージかもしれません。
社長の頭の中の「普通」は、言葉にしない限り、相手には一つも伝わっていません。
伝えていない期待は、期待ではなく、ただの思い込みです。
秘書の仕事の範囲は、「普通」ではなく契約で決まります。
雇用なら雇用契約で、外注なら業務の範囲で決まります。
そこを決めずに「普通は」で始めると、どんなに優秀な人とも、必ずすれ違います。
「今やって」「今日中に」は、タダではありません
ここがいちばん辛口なところです。
「今すぐやって」
「今日中にお願い」
「夜中に連絡しておくから、明日の朝イチまでに」
これを当たり前に求めるのであれば、それは時間で人を押さえている働き方、つまり雇用だから成り立つものです。
その時間、その人がほかの仕事をせずに、あなたのために待機している。だから「今」に応えられるのです。
しかも雇用であっても、時間外や深夜に働いてもらえば、割増の賃金を払うのが決まりです。
急ぎ・時間外・夜中は、本来、上乗せして払うものなのです。
外注で同じことを求めるなら、それは特急の仕事です。
特急には、特急の料金がかかります。
Nekonoteでも、どこまで速く動くかは、最初に契約で決めています。
決めているから約束を守れますし、守れる約束しかしないのが誠実さだと考えています。
「急ぎ」がタダで手に入る、と思っているうちは、どんな秘書を選んでも不満が残ります。
では、オンライン秘書ならいいのか?
ここで「じゃあオンライン秘書にしよう」と考える方もいらっしゃいます。
でも、オンライン秘書でも1人に任せている限り、構造は同じです。その人が休めば止まり、辞めれば一から探し直しです。
実は、Nekonoteでも同じことがありました。
担当の交代をきっかけに、「1人に任せる形のままでは、いつか止まる」と痛感しました。お恥ずかしい話ですが、私自身がそこから学びました。
リアルかオンラインか。
本当の問題は、そこではありませんでした。
消去法で考えると、こうなります
順番に消していきます。
- 1人を雇い続けるお金、1日分の仕事、育てる覚悟。どれかが欠けているなら、リアル秘書は消えます。
- 1人に依存して、止まるたびに困るのが嫌なら、「1人のオンライン秘書」も消えます。
- 残るのは、人ではなく仕事そのものを預ける形です。誰かが休んでも、チームとAIで回り続ける仕組みです。
社長に必要なのは、秘書という「人」なのか。
それとも、「止まらない仕事」なのか。

じゃあ、社長が上手に楽になるには?
辛口ばかりでは不公平なので、最後に、社長が本当に楽になる頼み方を書いておきます。

1. 「普通」を言葉にする
「これくらいやってほしい」を書き出してください。箇条書きで十分です。書き出した瞬間に、頼むことと自分でやることの境目が見えてきます。
2. 締め切りは「急ぎ」ではなく日時で伝える
「急ぎで」より「明日の15時まで」。それだけで、相手は段取りを組めます。結果的に、仕上がりも早くなります。
3. 急ぎを減らす
本当の急ぎは、実はそれほど多くありません。毎月必ずある仕事は、定例にしてしまえば「急ぎ」ではなくなります。思いついたら、その場で投げておく。それだけで、夜中の連絡はぐっと減ります。
4. 判断の基準を渡す
「この金額までは任せる」「この相手には先に返信していい」。基準を一つ渡すだけで、確認のやりとりがなくなります。社長への確認が減れば、楽になるのは社長自身です。
5. 本当の急ぎは、お金で買う
それでも急ぎは発生します。そのときは、特急として頼んで、気持ちよく払う。急ぎを特別扱いすると、ふだんの仕事も丁寧に回るようになります。
秘書に楽をさせてもらうのではなく、楽になれる頼み方を、社長が身につける。
いちばん効く投資は、実はここだと思っています。
最後に
秘書は、ステータスではありません。
「秘書がいる=一人前の経営者」ではないのです。
目的は、社長が社長にしかできない仕事に戻ることです。
私たちが「社長を、勝たせる。」と言うとき、それは社長の隣に誰かを座らせることではなく、社長の仕事が止まらない状態をつくることだと考えています。
辛口になりましたが、「なんとなく秘書がほしい」と思ったときこそ、一度立ち止まってみてください。
何を手放したいのか、まず書き出すところから。迷ったら、そこから一緒に考えさせてください。
▼「人を借りる」か、「部署ごと預ける」か。違いはこちらにまとめています
― 株式会社Nekonote 代表取締役 伊藤麻里